「のぼうの城」監督:犬童一心&樋口真嗣のW監督で案外うまくいってるけど不幸な作品としかいいようがない

62/100点

内容:天下統一を目指す豊臣秀吉は関東の雄・北条家に大軍を投じるも、その中には最後まで落ちなかった武州・忍城(おしじょう)と呼ばれる支城があった。その城には領民からでくのぼうをやゆした“のぼう様”と呼ばれ、誰も及ばぬ人気で人心を掌握する成田長親(野村萬斎)という城代がいた。秀吉は20,000の軍勢で攻撃を開始するが、将に求められる智も仁も勇もない、文字通りのでくのぼうのような男の長親は、その40分の1の軍勢で迎え討とうとする。

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『のぼうの城』13分特別映像『でくのぼうの奇策篇』 - YouTube
【完全ネタバレあり/以下、未読の方はご注意】

震災があった後の公開ということで、洪水シーンは大幅カットで残虐度ダウンという運の悪い映画。

キャスト・監督ともに気合が入ってて特に萬斎さんが顔を白塗りにして船上で踊るシーンは圧巻。佐藤浩市の演技も首チョンバも素晴らしかったし、山田孝之もプリケツ出して頑張ってる。そう、役者陣も監督もしっかり仕事をした良い映画なんだ。

でもね。ストーリーが悪いせいで映画的なカタルシスが薄い。これは原作小説のせいなんだけど、この原作自体がそもそも映画用に書かれたそうなので、全責任は原作者の和田竜にある。

まず、周囲を湖に囲まれた城での籠城戦なんだけど豊臣軍が水攻めするんで直接対決が少ない。んで最も迫力があるはずの水攻め堤防の決壊シーンが、おそらく震災に配慮してカットされているため迫力がない。で、水が引いた城に豊臣軍の総攻撃が始まる直前に、主城が陥落して戦争終了になる。
佐藤浩市が単騎で突撃する直前に戦が終了してしまうのだ。これはもうね、哀しすぎる。

史実に従ったばかりに映画的なカタルシスがないという無残なストーリーで惜しくてしょうがない。せめて敵軍の大将の首を取るとか、せめて堤防決壊シーンをオチにするとかあるでしょうに。

あとロード・オブ・ザ・リングで天才ピーター・ジャクソンが攻城戦の模範的な演出をしたせいで、日本の木造砦は分が悪い。悔しいがスケール感が乏しく武士が未開人にしか見えないのだ。嘘でも良いから石垣積みの城であって欲しかったなあ、と。

観終わった後に爽快感がないものの役者・演出ともに良く出来た作品なだけに、もう一歩踏み込めば世界でも通用するんじゃないのって思う一本でした。なんか突き抜けるものがないよね、邦画はだいたいそうだけどね。
おしまい。

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