「後妻業」黒川博行

78/100点

内容:

金が欲しいんやったら爺を紹介したる。一千万でも二千万でも、おまえの手練手管で稼げや。妻に先立たれ、結婚相談所で出会った二十二歳歳下の小夜子と同居を始めた老人・中瀬耕造は、脳梗塞で倒れ一命を取り留めたものの意識不明の重体に。だが、その裏で、実は小夜子と結婚相談所を経営する柏木は結託、耕造の財産を手に入れるべく、周到な計画を立てていた。病院に駆けつけた耕造の娘・尚子と朋美は、次第に牙をむく小夜子の本性を知り…。

著者プロフィール:

1949年、愛媛県生まれ。京都市立芸術大学美術学部彫刻科卒業。大阪府立高校の美術教師を経て、83年に「二度のお別れ」が第1回サントリーミステリー大賞佳作。86年に「キャッツアイころがった」で第4回サントリーミステリー大賞を受賞。96年に「カウント・プラン」で第49回日本推理作家協会賞を受賞。2014年に『破門』で第151回直木三十五賞を受賞

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よっ!黒川先生っ!と言いたくなる安定の一冊。間違いなく面白いけど、他の作品のキャラに似た登場人物が出てくるので若干の使い回し感はある。例えば、結婚相談所の所長・柏木は「疫病神」の二宮と同じく父がヤクザの設定やし、探偵の本多は「悪果」の堀内と同じく今里署の暴対係に在籍した設定になっている。それがどうした、という話やけど、読んでる時のイメージが過去の作品にかぶるので若干うっとおしい。

で、本のテーマが題名そのままの「後妻業」なので業者のやり方や残された遺族の動きなどが詳細に描かれる。あくまでも「後妻業」を中心に描くのでストーリーは柏木と本多を中心に進むが主人公はいない。
個人的には「悪果」シリーズで読みたかったストーリーではある。

【完全ネタバレあり/以下、未読の方はご注意】

柏木と小夜子の悪行が前半の1/3、探偵の本多の登場から攻守逆転し、柏木はじりじりと追い詰められる。

この本多がものすごーく良い味を出していて、この後妻業の2人を正義感じゃなく金目的で徹底的に洗い出す。

こいつは金の生る木かもしれんぞ――。
武内小夜子の尻尾をつかんで脅すのだ。後妻業のベースは結婚相談所だから、両方脅すのもいい。いずれにせよ、小夜子とブライダル微祥はグルだろう。
本多はほくそえんだ。久々に金の匂いを嗅ぎつけたのだ。

金に群がる悪党を描かせたら黒川先生は日本一じゃないでしょうか。

話のオチはこんな感じ。

元警官のツテを悪用しまくって小夜子と柏木を丸裸にした本多は、2人を脅迫して3千万円を要求するが、追い込まれた柏木は小夜子の弟で元ヤクザの黒澤博司をヒットマンとして送り込む。だが本多の殺害に失敗した博司は柏木から金を渡され沖縄に潜伏するよう指示されるが、金額に納得できず小夜子のマンションを訪ね金を要求する。しかし小夜子に鼻で笑われた博司は小夜子を絞殺してしまう。慌てた柏木はキャリーケースに小夜子の死体を詰めてマンションから車へ運ぶ途中で警官に職質され逮捕されてしまう。

という事で、小夜子は死亡、柏木は殺人罪で逮捕、本多は金を得られず――。
悪党どもが利益を得ること無く終わるという勧善懲悪のオチでございました。
せめて本多に稼いで欲しかったなーと。頑張ったのに可哀想ですね、本多さん。

次回の悪果シリーズに登場してきたら面白いんですけどね。

後妻業

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