めんどくさい重い話を田中兆子の「甘いお菓子は食べません」のレビューに載せて召し上がれ

最近つくづく思うのはお酒って本当にありがたいな、ということ。寝れない時に浴びるように飲めばどんな気分の時でもぐっすり寝れる。もはや寝ているというよりも気絶している状態に近くて、夜を早く終わらせてしまいたいという欲求が満たされるだけありがたい。こんな生活をもう5年ぐらいは続けている。はじめはビール1本で十分だったものが最終的にはウォッカを週に2本空けるまでいったときもある。その時は酒を飲むと心臓が痛くなって本気で死ぬかもしれないと思って1週間程度の断酒をした。その後は度数を下げて焼酎で我慢している。

アルコールの禁断症状が出るまでは進行していないが、依存症なのは間違いない。かといってこれを治療したいという思いはまったくない。

こういう暗い話は現実には吐き出せないのでここで書くことで改めて自己認識を深めようという作戦。そもそもこれを書こうと思ったのは田中兆子の「甘いお菓子は食べません」を読んだせい。6編からなる短編集ですが中のひとつ「残欠」という短編が秀逸すぎて刺さっている。
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以下、作品のネタバレです。オチまでバレます。ご注意。

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無限の住人の映画化が悲しい件

さて、木村拓哉さんといえばすべての役が木村さんという個性が強い役者さんというかただのアイドルさんなんですが、なんで無限の住人の主役が木村拓哉さんなのか三池監督に聞きたいよね。監督からの強いアプローチで実現した主演ということらしいけども、何を求めてらっしゃるのかさっぱりです。ああ、動員は多少上がるかも的な。このタイミングだから話題性は十分みたいな。

映画 『 無限の住人 』 特報 メーキング ZIP!
メーキングが出てるけど、うん、木村さんだねって。でも語りたいのはキムタクさんが万次とか嫌だよって話ではなくて、全30巻をどうまとめる気ですか三池さん、という点です。

結論からまいりますと、個人的にはこのシーンが入るなら見に行きますとも。劇場まで。
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手が!手が変だよ!いいよね、このシーン。大好き。何でもありかよってなったよね。いま公開されているキャストでは吐鉤群は登場するようなので六鬼団は登場するのかも。となると荒篠さんも出てきますよねー。期待ですね。

発表されている出演キャラは、万次、浅野凛、天津景久、尸良、乙橘槇絵、閑馬永空、伊羽研水、吐鈎群、黒衣鯖人、百琳、凶載斗。いやーちょっと盛りだくさんすぎて入り切らないんじゃないのこれ。万次と凛が出会って加賀まで追いかけて、最後は一刀流の逃避行で終わり。だろうね。江戸城人体実験みたいのになー。でもかなり端折らないと2時間に収まらないわけで、黒衣鯖人とか必要ないんじゃねーの、とか思うわ。

三池監督は職人監督なので及第点の映画を作ることには長けているから、スポンサーの要望を満たしながらそれなりのものを作るには間違いなく日本一。ただし、この無限の住人と次作のジョジョに関しては勘弁して欲しかった。作家性が薄い監督なので、原作から枝葉を落としてちょいちょいっとストーリーを作るはず。そして三池組でそこそこの(日本にしては)クオリティの映像で仕上げてくるんだろうけど、この監督の映画は一瞬で消費されちゃう。何度も見たくなる奥深さとか、監督からのメッセージ性は期待できない。復讐譚なんだからこう、罪を背負って生きる人間の業だとか、復習の連鎖の悲劇とか、せめてテーマがあればいいんだけど、キャッチコピーが「不死身って、死ぬほどめんどくせぇ。」ですよ。この末尾の「ぇ」が小文字ってあたりがキムタクさんのセリフ感でてるよね。なに、めんどくせぇって。ただの不死身がチャンバラするだけの映画になりそうな匂いがプンプンするわ。うへえ。

おしまい。

双亡亭壊すべしと地底旅行の話


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最近買った5冊。有名な作品ばかりでいまさら感想もへったくれもないなーと思いながら書き始めました。なにやら更新も久しぶりでご無沙汰しております。お元気でしょうか?私はあまり元気ではありません(メンタル面で)

 

さて、いざ書き出すともうちょっとだらだら書きたくなるのが本好きの悪い癖ですね。じゃあせっかくなんで双亡亭壊すべしの感想でも書きますか。この時点でノープランですけどね。

 

これは何といっても少年サンデーの新編集長の市原氏の肝煎りでスタートした藤田和日郎先生の新作ですね。同時に西村博之先生の新作も始まってるけどだいぶ前の話だしもういいよね。藤田先生、西村先生が戻ってきただけでサンデーが面白くなった気がするから不思議なもんです。で、この双亡亭ですが面白いのかといえばよくわかんないです。まず世界観がよくわからない。坂巻泥努という変態画家が作った謎のお屋敷「双亡亭」を壊そうぜってストーリーなんだけど、物語の中で隠されている部分が多く敵が見えないのでまだもやもやしている。ストーリーは少しづつ進んでいるので、何やら面白そうな気配はあるんだけど。でも主人公が凧葉さんというフリーター?だけど、主人公としてかなり弱い。普通の人だし。あと凧葉さんの叔父で40数年前に当時10歳ぐらいで行方不明になった人が子供の姿のまま発見されて準主人公的なポジションで出てくる。なぜか手がドリルになって。手がドリル!!!だせぇ。

そんなこんなでお屋敷の謎を明かして壊しちゃうぞって頑張るわけですが、科学者とか超能力者に山伏などなど、うしとらで見たような念力系のお話になってきたので期待です。うしとらも最初はまさかあんな話になるとは予想できなかったものね。少なくとも前作の絵本の世界の話よりは期待できるなーというところ。

 

ついでに「地底旅行」の感想も。ジュール・ヴェルヌの名作を倉薗紀彦が漫画化したんだけど、そもそもその名作小説を読んだことないからストーリーは知らない。そして書いている倉薗紀彦という方の本とも初めて出会ったわ。内容はクレイジーな教授に付き合わされて地球の中心を目指す旅に巻き込まれる甥っ子のお話。絵が上手くテンポも良い、そして何より地底旅行とかワクワクする。重い雰囲気を出すことに成功し、死と隣り合わせの危険な旅であることを醸せているので、どっしりと読み応えがある。内容は地下を彷徨ってるだけなんだけど、一つ間違えたら死んじゃうというか2巻にして何度も死にかけてて笑える。時代背景が二十世紀初頭あたりなので装備も貧弱だし、これで地底に潜るとか頭おかしいとしかいいようがない。さすが名作やで。そしてこの漫画は面白いなーと。ほんとビームはちょこちょこ名作を出してくるよね。んで今ちょろっと検索したらジュール・ヴェルヌを原作にして映画「センターオブジアース」は作られたって書いてるけど?!!え?あのバカ映画が同じ作品を原作にしているだと。そう考えたらこの漫画は本当に上手く書いていると思うなあ。なんせあのセンターオブジアースより圧倒的に面白いもの。まだ二巻だけど。映画と違って静寂と重さのある作品だけど唯一無二の味が出てて次も楽しみです。みたいなまとめでいいかしら。

 

あと山賊ダイヤリーはこれで完結したけど、もっとだらだらずっと書いてくれたら良かったのに。新作がまた始まるみたいだけどもー。それも読むけどもー。

 

おしまい。

 

 

 

双亡亭壊すべし 2 (少年サンデーコミックス)

双亡亭壊すべし 2 (少年サンデーコミックス)

 

 

 

地底旅行 2<地底旅行> (ビームコミックス)

地底旅行 2<地底旅行> (ビームコミックス)

 

 

相変わらず真造圭伍くんの漫画は面白い。『トーキョーエイリアンブラザーズ』 の1巻が出たよ!

さてさて。「僕らのフンカ祭」「みどりの星」などの柔らかくて情熱的で温かい漫画を書く新世代の漫画家である真造圭伍くんの新刊がでましたね!みんな読んだかい!?Twitterで真造先生が主役の冬ノ介コスプレを披露しているのは必見ですよー。
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真造圭伍情報 on Twitter: "実は冬ノ介君がよく着てる一番Tシャツは実物があるんです!青山キラー通りにあるThe 1st shopてお店に売ってます。作者恥ずかしながら冬ノ介ぽく着てみました。 https://t.co/QU7RoP5PWe"


で、今回のテーマは宇宙人から見る人間の生態について。
例えばおしっこは飲み物じゃないってことを知らないから平気でおいしく飲んじゃうような漫画で素敵です。
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まあ、おしっこはホントに飲んで喜んでるんだけど、この漫画は別にエロい訳ではなくて優秀な弟のもとにやってきたダメな兄が色々やらかすという兄弟愛溢れる漫画なわけです。ちょっぴり毒があって、優しく、微笑ましいという今回も真造ワールド全開で楽しいよね~。
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試し読みはこちら
spi-net.jp

単行本の帯には星野源さんがコメントしてるのはありがたいような、そういう層向けの漫画だって印象が固定されそうで困るような感じですけど楽しい一巻でございまして堪能いたしました。

おしまい。

トーキョーエイリアンブラザーズ 1 (ビッグコミックス)

トーキョーエイリアンブラザーズ 1 (ビッグコミックス)

おしゃれな室内スポーツ・ボルダリングに夢中な高校生を描く『のぼる小寺さん』の2巻が出たよ。「おしゃれな」と言われたら見たくなくなるそんな天邪鬼なあなたにもそっとオススメしてみたい漫画です

みんなボルダリングやってる~?!!です、ええ。僕の周りでは4・5年前あたりからおしゃれな人がやり出して、いまやある程度の市民権がありますよね、ボルダリングって。
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さて、こちらはそのボルダリングを高校の部活としてやってる小寺さんのお話です。最近2巻が知らぬ間に出てましたけど、ツボに入るかどうかは絵柄次第という漫画です。

この漫画、小寺さんの部活動を中心に友人・先輩とのゆる~い交流が描かれます。ほら、少し前の記事で漫画はキャラ7:ストーリー3でいいって話があったけど、これはまさにそう。主人公のキャラがメインでストーリーはボルダリングしてる小寺さんに関係なく進むわけです、で、ですね。

この小寺さんのビジュアルどうすか?って話ですね。金髪設定なのででんぱ組.inc最上もがっぽいところが僕は好きですけどね!
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一生懸命ボルダリングに打ち込む小寺さんをサービスショット的なコマ割りで見せるというね。なんか水泳選手の真面目なドキュメンタリーを見てたら、妙に胸とかお尻のカットが多いなあ、みたいな感覚ですよ!明らかに性的な目も入ってるよねっていう。で、この漫画ではそれが成功してるね、と思う訳です。

そもそも掲載してる雑誌が「good!アフタヌーン」という漫画オタク向けなので男性視点を入れないと読んでもらえないというのもあるでしょうしね。最近では可愛い女子がラーメンを食べるだけの漫画とか料理をするだけとかご飯を食べるだけとか、そんな漫画のボルダリング版といっていいだろうし、「○○するだけ」系の漫画の中ではキャラが立ってるので、面白いじゃないかと思うわけです。

しかし最近の高校ではボルダリング部みたいなのほんとにあるんすかね。おしゃれですよねー。
afternoon.moae.jp
おしまい。

年末にバーで出会った調教師の先生におすすめした西公平の「ゲス、騎乗前」の1巻がようやく発売された件

拝見。

年末に場末のバーで出会った調教師のお兄さんへ。

お兄さんは覚えているでしょうか。昨年末にあのバーで出会った2人組のことを。一人はベレー帽をかぶる自称「漂浪の画家」で、もう一人は冴えないリーマンの2人組を。

あの時、お兄さんは自慢気に「顔が指すの困るわ~」と言ったあげくに、自分の名前を無理やり私たちにwikiで調べさせましたよね。私達はまったくお兄さんのことを知りませんでしたが、あの晩、奢ってくれたから今では応援しています!また奢ってください!

さて、あの晩、お兄さんがごちそうしてくれたアイリッシュコーヒーを飲みながらご紹介した漫画がこちらです。「調教師に媚を売っていい馬に乗ろうとする漫画です」と説明したら「俺らは絶対に媚なんかで騎手を決めへん、絶対や」って仰ってましたね。でもお兄さん、この漫画は面白いっすよ。

ようやく1巻が発売されましたので、ごっつい稼いでるお兄さんは100冊ぐらい買って読んで下さいね。そしてお兄さんの「競馬は博打やない、ブラッド・スポーツや」との熱い言葉は一生使わないだろうけど忘れません。

またどこかでお会いできるといいですね。あの晩はしたたかに酔っておられたのできっと覚えてないでしょうけどね!

でも面白いですよ。西公平の「ゲス、騎乗前」です。
ぜひ読んで下さいね!!
そしてまた会えた時はまた奢ってくださいね!

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というお話。年末の話は実話です。
おしまい。

「ゴッドサイダー」「ミキストリ」の巻来功士先生の自伝漫画、「連載終了!~少年ジャンプ黄金期の舞台裏~」はさっぱりした読み口で!エログロはどこいったんだよ!

昔からよくある漫画家先生の立志伝というか自伝というか、そういう漫画ジャンルに巻来功士先生が挑戦しています。
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しかしですね、巻来功士といえば30代の私からしても一世代以上前の作家先生な訳で、そもそも今回買った「連載終了!~少年ジャンプ黄金期の舞台裏~」で初めて名前の読みた方を知ったよね。まきこうじって読むんだよみんな!

巻来功士先生の代表作である「ゴッドサイダー」とか「ミキストリ」は古本屋でよく見かけたけど読んだことはなし。何か独特の禍々しい雰囲気があるから、作者は絶対に変な人だと思ってたところに、この本が出たのでどんな作者なんだろうって買ってみたんだよね。

ところがですね、すごく普通なんですよこの本は!主人公の巻来功士先生もどこにでもいる普通の青年なんですよ。先生の作品から醸しだされる負のオーラがまったくない。憑き物が落ちたようにすっきりとした絵とストーリーで、先生の苦労話が続く訳です。いやいや、新人賞に応募して落ちた話とか担当編集が変わって大変だ、みたいな苦労話はですね、他の先生がすでに描いてるんで知ってるんですよ。見たかったのは先生の黒い(はず)の内面なのに、何もない。ゴッドサイダーの誕生秘話も非常に軽いノリで悪魔学の本を片手に描き上げるわけですよね。
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とはいえ、ジャンプ黄金期の舞台裏ってことで秋本治先生とか原哲夫先生が登場したり。
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荒木先生が登場したり、有名な先生が出てくるのは面白いですわ。
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面白く感じるのは編集部の話であったり他の先生達の話で巻来先生のお話はいまいち。絶対に何か隠しているよねこの先生。あるだろ、もっとぶち込める内容が!なきゃあんな漫画描けないだろ!あと、そこはかとなく絶妙にダサい雰囲気なのはご愛嬌ですかね。このページとか、そのページとか。翼が生えてるやん、みたいな。
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一番おもしろかったのは巻末のジャンプ5代目編集長・堀江信彦氏との対談。
堀江氏のマンガ論が非常におもしろかった。巻来先生は、まあ別に。

ストーリーラインが縦糸
演出やキャラクター作りが横糸

漫画って横糸7:縦糸3くらいでいいんだ。それを「キャラクター」っていうわけ。

大体20ページあたり100コマは必要。それで割ってないのは面白くないんだ

最近の漫画は70~80コマ。
じゃあその30コマくらいの違いはなんだって言うと、そこでちゃんと場面転換とか時間経過とか捨てカットを入れて、人の表情で間を作るとか、読者にフッと想像させるとか、そういうことをやっているの。演出をしてるのね。

それでその編集からメールが帰ってきて、「堀江さん、すいません。『ワンピース』104コマでした」って。

この部分は久保帯人先生に是非読んで頂きたいな、と思いましたよね。
巻来功士先生の強みであるエロス・バイオレンスがない自伝で少し残念でしたけどね!

おしまい。

ミキストリ 1巻

ミキストリ 1巻

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