久しぶりに本屋で声が出たわ。あの小川幸辰先生が新作を出している。しかも完全描き下ろしで!描き下ろしやで!いきなり書店に並べるとはエンターブレインさんもやりますなあ。
何と言っても小川幸辰名義では1998年の「孤島館殺人事件」以来の出版になるので約20年振り。別名義の「おがわ 甘藍」ではたまに描いてたのは知ってるけどあっちはねえ、ねえ?
若い読者に説明すると小川先生は1996年頃に「エンブリヲ」という虫と美少女が戯れるトラウマになる人続出の超名作を描いたんだけど、その後はエロ漫画家になってしまった方なわけです。
で、新刊コーナーにコレが並んでいて同姓同名の作家さんかと疑いながら買ったんだけど、いざ読み出しても疑いが晴れない。あれ?小川先生の描く女子ってこんなだっけ???
ちょい待って。主人公が出てきただけで頭がくらくらする。これはいつの時代の少女漫画なんだよ。背景とのギャップがありすぎやろ。そもそも縦ぶち抜きで主役が登場ってコマ割りが少女漫画感すげえ。あとこんなカットもあって電車で吹き出した。
いや、わかる。美しい風景に感動した女子のシーンや。わかる。でも浮いてへん?神社とか風景とかの描き方と女子の描き方のギャップがすげえ。
あと例えばこんな自然の景色のシーンは画力が半端じゃないのがわかる。上手い。すごい。ただ、女子は少女漫画的に可愛く、そしてその他登場人物は諸星大二郎先生チックな脱力っぷり。力の入れ具合が露骨に差別しているのがすげえ。
沼の画とか風景がすごくキレイ。なのに美少女が登場するとギャップで脳内処理が追いつかない。
ストーリーは住宅開発で住処を失いつつある謎の生き物との衝突、みたいな?
突っ込みどころは満載で、いやいやいやそれはないというシーンが山ほど出て来る。無理があるよその設定は、と何度も思った。でも不思議なものでそう思いながらもザクザク読み切ってしまう。たとえ美少女に違和感を感じてしまっても続きが気になる。さすがは小川先生。腐っても鯛!(超失礼)
この漫画は「エンブリヲ」の精神的な続編として描かれたってナタリーに書いてた。まあそう言われたらテーマは似てるような気がする。なので「エンブリヲ」でトラウマを持った人は必読だと思う。そして、民俗学とか妖怪とか禁忌の土地とかが好きな人にもおすすめできる。諸星大二郎と星野之宣が好きな人も。でも万人受けは難しい。
ただ、読後の感想としては買って良かった面白かった、と思う。古臭い面と新鮮な面を併せ持つ非常に不思議な漫画だった。小川先生のリハビリ作のような気はするけど、これを機にどんどん新作を描いて頂きたい。もっとだ!もっとできるだろ小川!である。
最後にですが、単行本の4ページ目がこれなんですがね。読むのやめようかと思いましたよね。効果音!!変だよ効果音!
そんな感じで非常に面白い漫画ですのでみんな買ってしまえばいいんだよ。ディスってるようになってしまったけど、ネタバレせずに書こうと思ったらこんな感じになってしまったよ。そして「エンブリヲ」を読んだことない子はこの機会にちゃんと読むんだよ。しかし小川先生が復活か。嬉しい驚きでございますね。
ちなみにAmazonの「おがわ 甘藍」の紹介文がひどい。
マンガ家美少女。現役小6の12歳。1993年、姉に、個人的に描きためていた作品を勝手に投稿され、まさかの上位入賞。その後、原宿を友人と歩いているところをスカウトされ、松文館より『破瓜』にてデビュー。以後、美少女Hマンガの若きエースとして、マニアたちの熱い視線に晒され続け、カラダの奥がジンジンしている。
みなさん。小川幸辰先生は漫画化歴20年以上の男性ですからね。覚えておきましょうね。
おしまい。
- 作者: 小川幸辰
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / エンターブレイン
- 発売日: 2017/11/15
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